恋も戦いと一緒で、前進、すなわち、それを成就させるための努力は楽しくて、何の苦もないが、恋が破綻して手仕舞いする時は、戦いに負けて退却するのと一緒で大きな苦痛と痛手がともなう。
フィリピンの若者が恋をするとき、男のアタックは強烈で、女心をとろけさせる。特に10代となると、やりたい一心で、身も心をささげる。こんなに愛してくれるならと、女は、なけなしの処女をささげてしまうのだが、それが悲劇のもととなる。フィリピンでは避妊をきらい、堕胎は殺人だから、恋=セックス=妊娠=出産となる。妊娠となると、生涯の愛を誓った件の色男は、手のひらを返したように、トンずらしてしまう。子供を生み育てる使命を神から授かった女は、子供のために、それこそ、身も心もささげなくてはならなくなる。それでも女たちは、子供がいて幸せと感じる。
彼らの別れ方はいたって簡単で、男は女との一切のコミュニケーションを絶つ。携帯電話番号も代えてしまう。なまじ、別れ話を持ち出して女に納得させようとか、手切れ金を渡そうとか、余計なことは考えない。1~2ヶ月もなしのつぶてを続ければ、女もあきらめる。子供がいなければ、女も次の相手を探すから、それで済むのだが、子供を作って、相手の人生を台無しにしてしまったとなると、そうは行かない。どっかでばったり会ったりしたら、ずぶりとやりかえされるから気をつけなければならない。
KIANは、若い女、ヤヤ・ドナ(20歳)とアテ・キム(18歳)に面倒を見てもらって、男冥利につきる
これが、日本人だったら、そうはいかない。女を孕ませて、例え、日本に帰ってしまったとしても、NPO法人を名乗る日本人が現れて、あの手この手で、責めて来る。認知していようがしていまいがDNA鑑定なるものがあるから、そう簡単には逃げ通せない。特に、役人や大企業に勤めている場合は、世間体というものがあるから、結局、数百万円レベルのお金で和解となる。もちろん、和解金の半分はNPOの取り分になるのは必定だ。
ならば、大多数のシングルマザーを作り出したはずのフィリピン人の男は何故追及されないのか。それは、いたって簡単な理屈で、幾ら追求したとしても、取るべきものが何もないからなのだ。そんな馬鹿なことに女は時間も金もかけないが、恨みだけは一生続く。
久しぶりにフィリピン人の友人と会うと、ところで、あの娘はどうした、今でもコミニュケーションはあるのか、聞かれる。コミニュケーションがある、すなわち交流、関係が続いているということなのだ。だから、女との別れは、コミニュケーションを絶つ、それにつきる。
ところかまわず姉のアテ・キムとイチャイチャしているKIAN。こうしてKIANは女をくどく手練手管を学ぶのだ
若いみそらをはげ親父にささげて、ある日、「この携帯は使われていません」では、女としても身もふたもない。だから、GRO(フィリピーナホステス)は、大きな魚(熟年日本人男性ないしはげ親父)が針にかかったとたんに、周到な仕掛けをする。それは、一緒に生活するための家を建てようなどと持ちかけるのだ。田舎に両親の土地があるとか、サブディビジョン(団地)の出物があるとか、今の内なら建売が安く買えるとか、あるいは、おじさんが建築屋で安く建築できるとか、様々な有利な話を持ち出して攻めてくる。
はげ親父は、若い彼女との甘い生活を夢見て口元と財布の紐が緩む。退職金の半分程度だから、まあ、いいだろう、これで彼女との絆も深まるだろう、などと、ますます鼻の下を長くする。
しかし、そこに女のしたたかな作戦がある。フィリピンでは、外国人は土地が買えないから、土地付き一戸建ての名義は彼女とならざるをえない。だから、彼女たちは、外人でも所有できるコンドミニアムの購入は決して勧めない。自分名義の家を建てる、あるいは買ってしまったら、例え、ある日突然、携帯が「この携帯は使われていません」とささやいても、にやっとするだけだ。これで、名実ともに家が手に入った、はげ親父なんていないほうがせいせいする、とほくそえむ。彼女から三行半を突きつけられる場合もあるが、そんな時、件のはげ親父は、騙されたと歯軋りするが、それこそ、後の祭りだ。
最近、用意周到に準備した書類で、女のしたたかな作戦を、こなごなに粉砕した賢い退職者がいる。別れの原因は二股かけていた女の方にあるのだが、上述の仕掛けは、しっかりとかけられており、女としては準備万端だった。しかし、その退職者から、PRAの預託金を使用したいという相談が私にあり、女の仕掛けに対して、逆仕掛けをしたのだ。退職者は、半信半疑だったが、そんなこともあろうと、素直に私が作成した書類に彼女の署名を取りつけ、準備万端としたのが功を奏した。
そして、2年後、まさに、そのときが来た。女の二股作戦に業を煮やした退職者は、彼女名義の資産をすべて売却し、始末してしまった。それを知った女は当然、金切り声をあげて抗議したが、後の祭り、退職者の携帯は冷ややかに「この携帯は、使われていません」を繰り返すだけだった。
息子の見送りに一族の子供達がマニラにやってきた。彼らが息子の家族となる日も遠くない
その仕掛けの逆仕掛けとは下記だ。
1. 長期賃貸契約;PRAの預託金を使用するために名義人の彼女と25年の長期賃貸契約を結ぶ。ただし、PRAの預託金を使う場合、土地建物は居住可能で5万ドル以上でなければならない。また、彼女名義のタイトル(権利書、CCT)が存在することなどが条件。これにより、少なくとも家の使用権利は確保できる(別れても居座ることはできる)。
2. ローン契約;家の購入資金は退職が出すが、使うのは彼女なのだから、資金の流れをはっきりさせるためにローン契約を結ぶ。これは裁判沙汰になったりしたときに大変重要な事項となる。また、ローンの返済は、1.の賃貸契約の家賃と相殺するものとし、さらに家を担保として押さえる。ちなみにPRAの預託金を使った場合は、PRAが退職者に成り代わって担保としておさえる文面を裏書する必要がある。
3. オプション契約;この契約が味噌だが、退職者は、本物件を売却して売却金を受け取る権利、他人あるいは、将来法律が代わって外国人も土地が持ているようになった時点で自分に名義を無償で変更する権利、など、物件を所有している状況に限りなく近いオプションを有するという契約を結ぶ。
4. 委任状;3.のオプションを行使するために必要な手続きを自らが実行するため、名義人からの委任状をもらっておく。
5. 白紙売買契約;物件の売買契約を作成し名義人のサインをもらっておく。ただし、売却先は白紙としておく。
6. タイトル(権利書);彼女名義のタイトル(CCT)の原本を預かっておく
色々分けのわからない契約にサインさせられると名義人の彼女は疑うかもしれないが、PRAの預託金を使うから必要などと言い訳は、しっかり準備しておく必要があるだろう。そうすれば、いざとなったときに泣きを見る羽目にならないで済む。しかし、はげ親父が女を泣かすよう様なことをしたら私は黙っていない。